Synopsis
作物はよく実り、病は寄りつかず、人々は穏やかに暮らしている。
山あいの集落・綴(つづり)には、誰も出ていこうとしない理由があった。
十二年に一度、娘を一人、トンネルの奥へ送る。
送られた者は帰らない。葬式は出さない。名前を口にしない。
なぜかと訊けば、答えはいつも「決まりだから」。
次の〈送り〉に選ばれたのは、碇が二十年、毎朝顔を合わせてきた幼なじみ・智代だった。
彼女自身さえ、その運命を穏やかに受け入れていた。
同じころ、鎌倉の廃屋から四人の大学生が迷い込む。
家族への連絡はつく。迎えに行くと返事も来る。
それなのに、誰も来ない。
智代を救おうとしきたりを調べる碇は、古い記録に残された空白と、トンネルの暗闇に潜むものへ近づいていく。
誰も疑わない幸福と、それでも消せない「なぜ」を描く、因習と怪異のホラー。
Serialization Info
Web Novel