Synopsis
「無理にお母さんって呼ばなくていいからね」
十六歳の俺に、父の再婚相手はそう言った。
三十一歳の彼女は、いきなり母親になろうとはしなかった。俺の気持ちを尊重し、必要なときにはそっと支えてくれる。
そんな彼女と暮らした二年間で、俺は一つの秘密を抱えるようになった。
父の妻である彼女を、好きになってしまったのだ。
想いを告げることなく、進学を機に実家を離れた。
それから五年。
二十三歳になった俺は、父から彼女との離婚を知らされる。
彼女は末期がんを患っていた。
久しぶりに会った彼女は、記憶の中よりずっと痩せていた。それでも、俺をからかう笑い方は昔と変わらない。
今度は俺が、彼女を支えたい。
そう思って始まった日々の中で、二人の距離は少しずつ変わっていく。
かつて俺を守ってくれた女性。
母と呼ばなかった、初恋の人。
大人になった今、俺は彼女の隣に、どんな存在として立てるのだろうか。
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