Synopsis
ダンジョンで落とした物は、数日かけて入口へ流れ着く。
剣も、財布も、捨てたはずの元カノとのペアリングも。
霞ヶ淵ダンジョン遺失物センターの窓口係・戸倉湊(20)には、落とし物に触れると「持ち主が落とした瞬間」が見える。
「ミノタウロスとの激闘中に紛失」と届け出た婚約指輪の持ち主は、スライムから全力で逃げ、おにぎりと間違えて指輪を投げていた。
探索者の見栄も嘘も黒歴史も、この窓口ではぜんぶお見通しだ。
深層へ回収に潜るときの武器は、保管期限が切れて持ち主の現れなかった落とし物たち。
落とし物の聖剣。落とし物の魔剣。なぜか左足しか届かないゴブリンの靴。
剣に触れれば、元の持ち主が最後に振るった一太刀が見える。その一太刀だけは、湊にも振れる。
借り物の伝説で、深層を斬り拓け。
けれど湊は、保管棚の最上段にある古いお守りにだけは、一度も触れたことがない。
子どもの頃、このダンジョンの入口で見つかった湊の首に、掛かっていたお守り。
触れれば、見えてしまうから。誰かが自分を手放した瞬間が。
そしてある夜、閉館後の投入口に、拾得日が「来週」の落とし物が届く――。
笑えて、少しだけ泣ける。ダンジョン遺失物センターお仕事ファンタジー、本日も窓口営業中。
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