Synopsis
切っ掛けは、ほんの些細なことだった。
婚約者である第一王子殿下が、最近、ひとりの平民の娘を気にかけている。
そう聞いたとき、私はさほど気に留めなかった。
言葉にしなくても、私たちの間には信頼と愛があると思っていたから。
私と二人でいるときは、いつもと変わらず優しい殿下。
ただ、彼女がいる場面では、いつだって彼女を優先する。
パーティでは彼女をエスコートし、学園では彼女と過ごす。
あぁ、私との婚約は、彼にとって政略なのだ。
二人きりのときに見せる優しさも、〝婚約者〟という王子としての仕事なのだと、嫌でも気づかされる。
彼女を側室に迎えるおつもりなのだろうか。
それとも、妾として囲うのだろうか。
学園生活の三年間で、私はゆっくり、ゆっくりと彼の心を諦めていった。
そして、すでに彼への想いを諦めたあと。
卒業と結婚を控えたある日、殿下は私に告げた。
彼女は平民ではなく、帝国の第五皇女なのだと。
だから、優先せざる終えなかったのだと。
そして、私を心から愛していると。
自分の心を探ってみた。
けれど、彼に対する愛は少しも残っていなかった。
三年間は、愛を消すのに十分な時間だった。
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