Synopsis

切っ掛けは、ほんの些細なことだった。 婚約者である第一王子殿下が、最近、ひとりの平民の娘を気にかけている。 そう聞いたとき、私はさほど気に留めなかった。 言葉にしなくても、私たちの間には信頼と愛があると思っていたから。 私と二人でいるときは、いつもと変わらず優しい殿下。 ただ、彼女がいる場面では、いつだって彼女を優先する。 パーティでは彼女をエスコートし、学園では彼女と過ごす。 あぁ、私との婚約は、彼にとって政略なのだ。 二人きりのときに見せる優しさも、〝婚約者〟という王子としての仕事なのだと、嫌でも気づかされる。 彼女を側室に迎えるおつもりなのだろうか。 それとも、妾として囲うのだろうか。 学園生活の三年間で、私はゆっくり、ゆっくりと彼の心を諦めていった。 そして、すでに彼への想いを諦めたあと。 卒業と結婚を控えたある日、殿下は私に告げた。 彼女は平民ではなく、帝国の第五皇女なのだと。 だから、優先せざる終えなかったのだと。 そして、私を心から愛していると。 自分の心を探ってみた。 けれど、彼に対する愛は少しも残っていなかった。 三年間は、愛を消すのに十分な時間だった。

Serialization Info

Web Novel

Service languages
Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou10/15/2026
  • Currentタイトル 公務だったと貴方は言ったが、ゆっくりと消えた愛はもう戻らなかった