Synopsis
桑を食む雨音が、止んでいた。
先蚕礼を十日後に控えた後宮の御蚕所で、皇后が育てる聖なる蚕が一夜にして千余匹も死んだ。『北から来た野蚕の皇后が呪った』――責めを負わされたのは、蚕村から来たばかりの下働き・眠(ミン)。
蚕を我が子のように愛し、人間まで『何齢か』『食欲はあるか』で見てしまう彼女は、字こそ読めないが、糸と蚕の声なら誰より読める。
「お蚕さまは病で死んだんじゃありません。毒を、風に乗せて盛られたんです」
勅は、皇后の絹に記したものしか勅と認められない国。主上が姿を消して三月、蚕の死は『絹を要らない誰か』の仕業なのか。
虫が大の苦手な皇后・朔と、字の読めない蚕飼い・眠。凸凹の二人が、糸口から後宮の嘘を手繰りはじめる。
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