Synopsis
「涙ってしょっぱいのにさ、なんで海の水は目に沁みるんだろ」
「わからんねえ」
「ま、調べりゃいいんだけど」
だらしなく席に座る空戸《そらと》はスカートのポケットからスマホを取り出して電源ボタンを押す。
教室で堂々とスマホを取り出している彼女を見て、私たちは本当に明日この高校を卒業するのだと実感する。
ちくり、と細い針が私の心を触った。空戸は卒業したら東京で一人暮らしを始めるのだ。
「空戸、これから一緒に海行こう」
私は短く提案する。空戸は眉を寄せた。
「えー寒くない? てかなんで海」
「思い出がほしいのよ」
「ほお、どんなのがいいんだい?」
空戸に尋ねられて、私はすぐに口を開いた。
欲しいものは決まっている。
「眩しくて、鮮烈なやつ」
「ふーん鮮烈ねえ」
空戸は誰ともなく呟いて、にやりと口角を上げた。
彼女の目が私を捉える。
「いいね、行こう」
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