Synopsis
雨の降る大学のキャンパスで、二人は出会った。
長野の田舎から上京した高瀬直人と、東京で育った水野ゆかり。育った環境も、見てきた景色も違う二人は、同じゼミで言葉を交わすようになる。
一本の傘を分け合った帰り道。何気ない会話。知らなかった誰かの日常に触れる、小さな喜び。
やがて二人は恋人になり、同じ部屋で暮らし始める。二つ並んだマグカップ、仕事帰りの食卓、何でもない休日。特別なことなどなくても、二人でいられることが幸せだった。
けれど、社会に出れば、それぞれに背負うものが増えていく。
仕事への責任、故郷の家族の問題、将来への不安。相手を思いやるつもりで言葉を飲み込み、心配をかけまいと本当の気持ちを隠す。少しずつ、二人の間に沈黙が増えていった。
愛していないわけではない。嫌いになったわけでもない。
それでも、同じ部屋に帰ることができなくなる日が来る。
雨の夜、帰りを待つ人と、帰れなくなった人。
出会えたことの喜びと、共に生きられなかった切なさを描く、静かな恋愛物語。
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