Synopsis
船底の下は、油と錆と、雨水の匂いがした。
「お嬢様。……お嬢様、お召し物が」
頭上から、侍女のリタの困り果てた声が降ってくる。ヴェルディアナは返事をしないまま、仰向けのまま船体の継ぎ目に指を這わせた。
竜骨に歪みはない。肋材の継ぎ目にも、浮いた錆は見当たらない。何年も雨ざらしだったはずなのに、指先に触れる鋲の頭は、どれも油で黒く光っていた。
「リタ。この船、何年ここにつながれていたと言っていたかしら」
「港の方のお話では、六年と……」
Serialization Info
Web Novel