Synopsis
『皇帝ペンギンは嘘をつく』
ある日、日本のどこかに皇帝ペンギンが現れた。
南極にいるはずの生き物が、なぜ日本にいるのか。
どこから来たのか。
これからどこへ行くのか。
誰にも分からない。
ニュースになり、SNSで話題になり、専門家まで首をひねる。
それでも当の本人は、そんなことは気にしていない。
暑そうに歩いて、
魚を探して、
人混みを避けて、
たまに妙な場所に現れる。
日本の人々も、最初こそ驚いた。
けれど、何度も目撃されるうちに、
「またあのペンギンか」
と、少しずつ受け入れていく。
そんなある日、僕はそのペンギンを見かけた。
ただの珍しい出来事。
最初は、そう思っていた。
でも、不思議だった。
初めて会ったはずなのに、
なぜか見覚えがある。
ペンギンも、ときどき僕を見る。
ただそれだけ。
特別な力があるわけでもない。
世界を救うわけでもない。
どこにでもある日本の日常の中で、
一羽の皇帝ペンギンだけが、少しだけおかしい。
笑えること。
くだらないこと。
ちょっと嬉しいこと。
思い出したくないこと。
誰にでも一つくらいありそうな、小さな出来事。
そんな毎日の中で、
僕とペンギンの距離は少しずつ縮まっていく。
そして、気づかないうちに、
「たまたま」で片づけていた出来事が、
一本につながり始める。
あのペンギンは、何を知っているのか。
そして――
皇帝ペンギンは、本当に嘘をつくのか。
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