Synopsis

西暦二一五五年。それはのちに「アイドル暦一年」と呼ばれることになる、奇妙な時代の幕開けだった。 長引く不況と、それに伴う凶悪犯罪の増加。そんな暗い現実から逃避するように、人々は華やかな世界を夢見た。結果として、アイドルを目指す若者が爆発的に増え、日本中は瞬く間にアイドルで溢れかえった。 アイドルが増えれば、当然、それを追いかけるファンも劇的に増える。これがすべての引き金だった。 何千万、何億というファンが毎日のようにコンサート会場へ詰めかけ、狂ったように拳を振り上げ、歓声をあげる。その凄まじい熱気は、日本の平均気温をまたたく間に五度も上昇させてしまった。 四季は消滅し、余波で北極の氷は溶け落ち、地球規模で砂漠化が進行した。気象学者たちは頭を抱えたが、熱狂する人々には地球の危機など耳に入らなかった。まさに驚天動地、アイドルこそが世界の中心だった。 しかし、物事には常に裏がある。 これほど世界が狂乱に包まれても、頑なにアイドルに興味を持たない「非ファン」の人間たちが一定数存在した。彼らはこの時代において、哀れなマイノリティ(少数派)だった。 やがて、熱狂的なファンと、冷めた非ファンとの間で、小さな摩擦が生まれ始めた。最初は視線の牽制や口論だったが、いがみ合いの火種は急速に燃え広がり、やがて凄惨な暴力へと発展した。 過激化したアイドルファンたちは、自分たちの「聖域」を守るために各地で武装を開始した。それらの武装組織は、やがて一つの志のもとに統合され、巨大な組織となった。 アイドルファン武装組織集団――通称『アイラ武勇』である。 時を同じくして、追い詰められた非ファンたちも、生き残りをかけて徒党を組んだ。彼らが結成した武装組織の名は『大地獄連合』。アイドルのいない静寂な世界を取り戻すための、必死の抵抗勢力だった。 かくして、両者の血で血を洗う争いの火蓋が切って落とされた。世に言う『アイドル戦国時代』の始まりである。

Serialization Info

Web Novel

Service languages
Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou09/28/2026
  • Current銀幕戦記