Synopsis

1980年代後半。日本のスーパーコンピューターは世界最速だった。速く、安く、どの国の製品も追いつけなかった。 しかしアメリカは言った。「安すぎる、不公平だ」と。 国立大学で気象シミュレーションを研究する若手研究者・坂本大輔、三十一歳。台風の進路予測の精度を上げれば、逃げ遅れる人間を減らせる。その一点だけを信じて、計算を続けてきた男だった。 次世代スーパーコンピューターの選定会議で、坂本は知る。アメリカの圧力で、性能で劣るアメリカ製が選ばれるかもしれない、と。 日本製なら三年で届く目標が、五年から六年かかる。その間に来る台風は、今の精度で予測するしかない。 坂本は数字を持って霞が関に行った。学会で声を上げた。十二人の研究者と連名で要望書を出した。それでも流れは変わらなかった。 勝てない戦いだと、分かっていた。それでも言い続けた。言わなければ、確実に何も変わらないから。 これは、数字のために戦い続けた研究者の記録である。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou09/27/2026
  • Current敗戦技術 第四巻 超算の敗戦