Synopsis

主人公:一乃瀬 紡(いちのせ・つむぎ) 一乃瀬紡は、よくふざける。 選抜発表前、16人が張り詰めていても、 「ねえ、この空気で今くるみ割ったら怒られる?」 そんな一言で笑いを起こす。 空気が読めないようで、誰より空気を読んでいる。 努力している姿を見られるのが恥ずかしくて、できなかった振付は一人で練習する。落ち込んだ仲間には冗談を、体調を崩した子には「余ったから」と料理を渡す。 本気も、優しさも、見せ方が少し下手なのだ。 長い時間を経て、ようやく掴んだ初選抜。 「やっと、明るい報告ができる」 その日だけは、笑ってごまかせずに泣いた。 しかし次の作品では、メイン曲の選抜から外れる。 ――やっぱり私は、選ばれる側じゃないのかもしれない。 ところが発表は続いた。 カップリング曲、センター。一乃瀬紡。 選抜にはいない。 なのに、一曲の真ん中にはいる。 そして今度は、一人で雑誌の表紙に抜擢される。 「……編集部、大丈夫?」 いつものように茶化しながら、カメラが向いた瞬間、その目が変わる。 歌でもない。 ダンスでもない。 選抜でもない。 そこで見つけられたのは、紡自身も知らなかった一乃瀬紡だった。 道端の落とし物には、いくらでも物語を想像できるくせに、自分の物語だけはいつの間にか、 「選ばれたか、選ばれなかったか」 それだけで決めようとしていた。 選抜も。 センターも。 表紙も。 誰かの沈んだ空気を一言で変えてきた日々も。 全部、違う場所で必要とされた同じ自分だった。 これは、誰かの落とし物にはすぐ気づくのに、自分が落とした大切なものだけは見つけられなかった少女の物語。 落としたなら、終わりじゃない。 あとで拾えばいい。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou09/25/2026
  • Current【外章】落としたものは、あとで拾う