Synopsis
語り手は、旅行鞄の持ち手に付いた小さな真鍮の鈴です。目がないので、音だけで世界を見ています。
持ち主は藤谷ちはる、二十九歳。旅と、旅先での出会いが好きな会社員です。手帳の表紙の裏に「命は短し走れよ乙女」と書いてあるそうです。本当は「命短し恋せよ乙女」という歌なのですが、七年前から間違えたまま、毎年そう書き写しては走り続けています。
今回は秋の柿沢へ二泊三日。宿の名前は霧屋といいます。
その三日間に起きたことは、全部わたしに聞こえていました。けれど、鈴には口がありません。
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