Synopsis
三十年以上、小学校教師として子どもたちと向き合ってきた景司。成績や家庭環境に左右されず、一人一人の可能性を見つめることを信条としてきた。ある日、新聞で、世界的な研究成果を上げた科学者・崇の名前を目にする。崇は、かつて景司が担任した教え子だった。
少年時代の崇は、決して目立つ子ではなかった。ただ、科学への強い好奇心を持ち、何度も景司に「先生、どうしてですか?」と問い続けた。そんな崇に景司がかけた言葉は、「好きなら続けてみろ」という何気ない一言だった。
やがて崇から祝賀会への招待を受けた景司は、教え子の成功を誇りに思いながらも、自分には何も成し遂げたものがないという寂しさと、崇への小さな嫉妬を抱いていることに気づく。しかし祝賀会で崇が語ったのは、景司への深い感謝だった。「自分の可能性を最初に見つけてくれたのは先生だった。」
その言葉によって景司は悟る。教え子が自分を越えることは、教師の敗北ではない。「青は藍より出でて、藍より青し」。自分より遠くへ歩いていく教え子の背中を見送ることこそ、教師にとって何よりの誉れなのだと。そして翌朝、景司は再び教室に立ち、また新しい子どもの可能性と向き合い始める。
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