Synopsis

最近のカーナビは、エンジンをかけると、その日が何の日なのか教えてくれる。  猫の日。  眼鏡の日。  聞いたこともないような記念日。  だから佐伯は、その朝に告げられた言葉も気に留めなかった。 『今日は――空席の日です』  だが、出勤すると妙なことが続く。  満車の駐車場に、一台分だけ残された空間。  十人の会議に、十一脚ある椅子。  混雑した飲食店で、誰も座ろうとしない一席。  そして周囲の人間は、当然のように言う。 「今日、空席の日じゃん」  調べてみると、古い掲示板に奇妙なルールが残されていた。 ・必ず一つ場所を空けること。 ・空いている場所に座ってはいけない。 ・誰かが座っているように見えても、声をかけないこと。 ・十八時以降、空席を数えてはいけない。 ・自分の席が空いていたら、家に帰ること。  意味の分からない決まり。  だが夕方。  佐伯が自分のデスクへ戻ると――そこから、彼の荷物だけがすべて消えていた。  空席とは、誰のために空けられているのか。  誰もが知っている「知らない記念日」をめぐる、一話完結の現代怪談。

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Kakuyomu
Kakuyomu10/02/2026
  • Current知らない記念日