Synopsis
主君を逃がすため、ただ一人、橋に残った侍がいた。
槍に貫かれようと。
矢に射られようと。
血を流し、膝が折れようと。
侍は、退かなかった。
「小童。背を見せるな」
主君の言葉を胸に、迫る敵を斬り続け――役目を果たした侍は、静かに目を閉じる。
次に目を覚ました場所は、魔法の存在する異世界だった。
見知らぬ国。
見知らぬ人々。
そして、見知らぬ理。
そこでは時に、多くを救うために少数を切り捨てることが正しいとされる。
侍には、それがわからない。
だから、目の前に救える命があれば手を伸ばす。
誰かが背を向けるなら、自分が前に立つ。
たとえ、一人でも。
「命は、また生えるのか」
幾人もの生き方とぶつかりながら、名もなき侍は歩いていく。
背に守るべきものがある限り――幾度でも侍は立つ。
やがて、人々は知ることになる。
侍とは、刀を持つ者の名ではない。
その生き様の名なのだと。
これは、一人の侍が異世界を変える物語ではない。
侍の背を見た人々が、自ら立ち上がっていく物語。
――侍、異世界に立つ。
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