Synopsis
ぼくは、大学で生物学を教える講師だったが、先輩の勧めでメキシコのヴィラルース洞窟に棲む古細菌を研究する調査団に加わった。
そこでぼくは不慮の事故に襲われる。洞窟の中で、古細菌が作る硫化水素ガスを吸い込んで、致命的な酸欠状態に陥ったのだ。昏睡状態のまま、ぼくは病院に運ばれる。奇跡的に目覚めたとき、病室には君がいた。生物学の授業しているときに知り合った生徒で、美術史の専攻だったが、古代生物への興味がきっかけで付き合うようになった。
帰国して君と食事をしたあと、自宅で急に気分が悪くなる。遠のく意識の中で、この症状が硫化水素を吸ったときと同じことに気づく。
目覚めると、ぼくはガラスの檻の中にいた。ぼくの身体はアウストラロピテクスに退化していた。君は、退化したこの身体に、ぼくの意識と記憶がまだ残されていることに気づき、必死にぼくを守ろうとする。やがて、身体にまた異変が起き、苦痛のあまり死を覚悟する。
再び目覚めたとき、ぼくはペルム紀に生息したディメトロドンの姿になっていた。ぼくの身体は、猿から恐竜へとヒトの進化を逆行し続けているのだ。次に退化したのはアカントステガだった。オオサンショウウオのような両生類だ。君は、この身体にぼくがまだ残っていることを確認しようとしたけれど、ぼくは無視した。これ以上、君の悲しみを繰り返したくないと思ったからだ。君は何度もぼくの存在を確かめるが、やがて心が折れたように泣き崩れる。
ぼくはさらに退化し続けた。カビのような微生物になったぼくは、水場や動物の皮膚で増殖した。そんな身体になっても君への愛はすべて覚えているのだ。やがて、ぼくはさらに退化する。ここから先は、生命の起源において未知の領域だった。
ぼくはいつしかある夢を抱いていた。途方もない妄想だが、決して不可能ではないことだ。それが実現するまで、ぼくはずっと待ち続けていた。やがてぼくの夢は叶い、また君と会うことができたのだった。
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