Synopsis
王都が滅びる。
聖女が串刺しになる。
剣聖は片腕を失い、竜騎士は空から墜ち、最後には魔王を討つはずの勇者さえ死ぬ。
傭兵レインは、その光景を七度見てきた。
彼に与えられた呪いは、死ぬたびに三年前へ戻る《灰還り》。
ただし、時間を巻き戻すたびに、誰か一人についての記憶を永久に失う。
一度目は故郷を救った。
二度目は勇者を救った。
三度目は聖女を。
そうして世界を救う方法を探し続けるうちに、レインは仲間たちとの思い出をほとんど失ってしまった。
それでも八度目。
ついに彼は、誰一人死なせないための道を見つける。
勇者には会わない。
聖女にも近づかない。
剣聖からは嫌われる。
自分だけが泥を被り、歴史の表舞台から消える。
それが全員を生かす唯一の方法だった。
計画は成功する。
三年前には滅んでいた街が残り、死ぬはずだった仲間たちは英雄として笑っている。
レイン自身を除いて。
役目を終えた彼は、誰にも知られず辺境へ消える――はずだった。
その夜。
宿屋の扉を叩く音がした。
「見つけた」
扉の向こうには、会わなかったはずの聖女が立っていた。
「七回も私を助けておいて、八回目だけ逃げられると思ったんですか?」
レインは知らなかった。
時間を巻き戻すたび、自分だけが記憶を失っていたわけではない。
世界のどこかに、《失われた時間の夢》を見る者たちがいたことを。
そして七度の人生すべてで。
彼が命を投げ捨てて救った者たちは、
彼だけを、忘れていなかった。
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