Synopsis

【あらすじ】  夜になると、街に壁が降りる。  閉じ込められた区画に「置き去り」にされた物は、持ち主の記憶を宿したまま膨れ上がり、怪異になる。聖堂庁はそれを壊して処理し、翌朝、住民は自分の家財を失う。祭りの夜でも、壁は降りる。  そこへ飛び降りていくのが、姉妹の拾い屋だ。  妹のカテリーナ(15)は柄の短い大鎌を振るう。届かせるには、自分から深く踏み込むしかない。姉のルクレツィア(19)は片側だけの銃を撃つ。弾は自分の体力で、撃つたびに腹が減る。二人には生まれつき、対のあざがある。痛みも、疲れも、空腹も、勝手に半分ずつになる。半分と半分で、やっと一人分。  彼女たちの流儀はひとつ——壊さずに、返す。怪異が抱えた物には必ず「持ち主の手の跡」がある。毎日握られて色の変わった、その一点。そこを斬れば、物は傷ひとつなく持ち主のもとへ戻っていく。落ちた花びらが、ひとりでに元の絵に組み上がっていくように。  八年前に消えた父が遺した手帳と、依頼で拾った形見の指輪。二つに刻まれた同じ紋章から、姉妹は父の過去と、自分たちの得物の秘密に触れていく。  貧乏で、いつも腹を空かせた二人の、分け合いかたの物語。 【舞台】 中世イタリア風の城塞都市。夜ごと石畳の溝から壁がせり上がり、区画を封じる。朝には開く。姉妹が暮らすのは、家賃を滞納したままの下宿の屋根裏。 【登場人物】 カテリーナ(15・妹/大鎌) 柄が短く、届かせるには自分から踏み込むしかない。物に謝り、斬る前に「……失礼します」と言う。花や絵の上を踏まない ルクレツィア(19・姉/銃) 弾は自分の体力。撃つほど腹が減る。重い話をぜんぶ軽口で包む。妹が決めたことには必ず乗る ニコロ(聖堂庁・査定課) 帳簿と計算尺。善意を規定に翻訳しないと出力できない男。戦闘の最中に損害額を数える ジロラモ(聖堂庁・観測研究部門) 重力を操り、白手袋のままエスプレッソを秒数で計って淹れる。姉妹を「観測対象」と呼ぶ ノンナ・ジーナ(大家) 家賃を怒鳴りながら、同じ手でパンを押しつけてくる バルド(八百屋) ノックをしない依頼人。見栄っ張りでお調子者だが、涙だけは本物 父(八年前に失踪) 怪異を壊さず戻せると最初に書いた人。手帳の最後の一行——『半分ずつなら、どこまでも行ける』 【この巻の到達点】 二人が「一対化」に至るところまで。手首を重ね、背中合わせで、半分ずつの得物を一つに戻す。父の失踪の真相には、まだ指一本届いていない。 【見せ場】 三箇所(数百万枚の花びらが石畳の上で一枚の絵に組み上がる/職人街の道具が持ち主の作業台へ一つずつ帰る/三日ぶんの街が六百二十戸へ一斉に降ってくる) 【二巻以降】 北区だけ、三か月、怪異の発生報告がゼロ。壁は毎晩降りているのに。そこに立つ、手袋をしていない二つの影。姉が隠している病と、姉妹の借金を買い取ろうとしている男。

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Kakuyomu09/05/2026
  • Current半分こしないと、戦えません