Synopsis
※カドコミ漫画原作コンテスト【ナツガタリ’26】応募作のため、脚本形式で執筆しています。
高校生・望月奈々が住宅街で偶然見つけた、小さな洋菓子店『Pâtisserie mémoire』。
そのショーケースには時折、店主・一ノ瀬章が作った覚えのない、不思議なケーキが並ぶ。
『おかえり』
『となり』
『背中』
『夕焼け』
『ここだよ』――。
不思議な名前をつけられたケーキを食べると蘇るのは、本人さえ忘れていた「記憶」。
母との思い出。
先立った妻の言葉。
忘れたかった罪。
すれ違ってしまった兄妹の時間。
そして、失くしてしまった大切なもの。
亡き母との記憶を取り戻した奈々は、それまで家族を優先し、自分の「やりたいこと」を後回しにしていたことに気づく。
そして、自ら望んでメモリエで働き始める。
ケーキが呼び戻す記憶は、決して優しいものばかりではない。
誰かを優しく救う記憶もあれば、心を重く揺るがす記憶もある。
それでも奈々は、忘れられた記憶には「思い出してほしい」という意思があるのではないかと感じ取り、その行方を見届けることを選んでいく。
一方、どこか気怠げで飄々とした店主・一ノ瀬にも秘密がある。
彼はなぜ、奇妙なケーキが現れるショーケースの一角をいつも空けているのか。
なぜ『mémoire――記憶』と名づけたこの店にいるのか。
「……違うことなんですよ。知ってることと……思い出せることは。」
店の奥にひっそり広げられた古い雑誌。
1995年の記事には、現在とほとんど変わらない姿の一ノ瀬章が写っていた。
忘れた人。
忘れられた人。
そして、思い出されるのを待っている記憶。
これは、忘れた人と記憶をつなぐ、不思議なパティスリーの物語。
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