Synopsis

私の結婚は、三百六十五回の夕食で終わります。

 仕事しか見ない孫を案じた亡き公爵夫人の遺言は、「妻と同じ食卓を囲み、三百六十五回の夕食を共にすること」。冷血公爵と呼ばれる旦那様と、母の書店を買い戻したい私は、納得ずくで契約結婚を結びました。数え終えた翌朝、預けてある離縁状が受理されます。

「明日が三百六十五回目。あと一度で離縁ですね」
「……そうか」

 泣いてしまいそうだったので、笑って言いました。
 その翌晩から、旦那様が夕食の席に来なくなりました。

 馬車の中でクルミを三粒。医師に止められた夜食。四日目には執事の説明も尽きて――「旦那様は執務室で、夕食を召し上がらない努力をなさっています」。廊下ですれ違えば、お腹は正直に鳴っているのに。パンを勧めても「食事とパンの境界は曖昧だ」と逃げていきます。

 それならばと、私は最後の一食を籠に詰め、執務室の扉を叩きました。

 異世界恋愛・一話完結。悪役も、ざまぁも、特殊能力もありません。あるのは契約書と、一年ぶんの食卓だけです。

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Alphapolis
Alphapolis09/02/2026
  • Current「あと一度で離縁ですね」と笑ったら、旦那様が夕食の席に来なくなりました