Synopsis
のどかな島で暮らす、釣り好きの高校生・磯崎天雅(いそざき・たいが)。ある夏の日、彼は「星落としの洞窟」の奥で、記憶をなくした少女を拾う。名前も過去も持たない彼女に、天雅は「レミ」という名を贈った。
炊飯器のボタンも知らないほど世間知らずなのに、大学生でも解けない数式を平気で書いてしまう、不思議な少女レミ。ふたりの夏は、まぶしくて、あたたかくて、少しずつ恋の色に染まっていく。
けれど、その夏のうしろには、彼女が忘れた「罪」が息をひそめていた。レミは、別の世界を滅ぼした天才科学者であり、その存在はこの世界をも危険にさらす特異点だったのだ。
天雅を、世界を守るため——レミは暴走するエネルギーを我が身に引き受け、消えるのではなく、青く光る「球体」へと姿を変えてしまう。その最後の瞬間、気丈な笑顔の下からこぼれたのは、「消えたくない、元に戻して」という、むきだしの叫びだった。
少年は、その叫びに応えると誓う。父の海にわずかに溶けた元素だけを頼りに、十年をかけて、球体を人へと戻していく――。
これは、世界を滅ぼし球体となった少女と、その少女を取り戻すために十年を捧げた、ひとりの男の、鎮魂と再生の物語。
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