Synopsis
神は、もう祈られない。
けれど――検索されている。
東京から電車で四十分。
どこにでもある郊外都市、神狭市。
高校生の天瀬ユウリは、
神話や都市伝説の考察が好きな、ごく普通の少年だった。
そんな彼のスマートフォンに、
ある日、見覚えのないアプリが現れる。
《AVIS(アビス)》
神話を検索し、
神々の類型を照合し、
都市伝説を解析する――はずのアプリ。
だが、ユウリが一人の転校生を検索した瞬間、
画面に異常な表示が現れた。
《照応候補:過多》
《解析不能》
《現在名:星宮ミオ》
《現在名を保持してください》
その少女の名は、星宮ミオ。
そして、その夜。
駅に存在しない《無番線ホーム》が現れた。
顔のない車掌。
名前を奪う白い切符。
現実には存在しないホーム。
そこでユウリがしたことは、
神と戦うことではなかった。
ただ、彼女の名を呼んだ。
「星宮ミオ」
それが、すべての始まりだった。
やがて神狭市では、
ネットと現実の境界を越えて《神話構文》が発生し始める。
存在しない生徒の名が追加される出席簿。
SNSの願望から生まれる偽物の太陽神。
人間を安全な分類へ閉じ込めようとする管理機構。
名前そのものが消えていく欠落街区。
神の力をランキング化するゲームセンター。
診断名を書いた瞬間、患者をその病へ固定しかねない診療所。
そして、
誰にも名前を覚えてもらえない客が訪れるカフェ。
神話はもう、古い本の中だけには存在しない。
検索履歴。
SNS。
動画。
アプリ。
学校の名簿。
ランキング。
診断結果。
監視記録。
現代社会が毎日生み出している《記録》そのものが、
新しい神話を綴り始めている。
人々が同じ神を検索すれば――神は現れる。
誰かを「女神」と呼び続ければ――その少女は女神へ近づいていく。
名前を書き換えれば――人間そのものまで書き換わる。
そんな世界でユウリに与えられたのは、
最強の神でも、伝説の武器でもない。
まだ何者とも決まっていないものを、決めつけずに見る力。
神にするのか。
人として残すのか。
記録するのか。
消すのか。
危険だから切り捨てるのか。
危険ごと《余白》として残すのか。
正しい答えを持つ者たちが争う街で、
ユウリは何度も立ち止まる。
そして問い続ける。
――その名前は、本当にその人のものなのか?
神話が検索され、
人間が構文へ変換されていく現代。
これは、世界を救う英雄の神話ではない。
まだ書かれていない答えを残すための、現代神話の黙示録。
スマホとSNSの時代に神話が再構成される現代学園伝奇。
※公式サイト先行公開、小説家になろう平行連載
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