Synopsis
■ あらすじ
東雲理央は、そのポスターを一度も見ていない。
だが倉沢をはじめ、周囲の生徒たちは口を揃えて言う——「確かにあった」と。
記録に残らないもの。
存在を示せないもの。
それでも、確かに“見た”とされるもの。
やがて理央の周囲で、同じような違和感が繰り返される。
消えた時計、歪む空間、そして——「三島」という、“誰もが知っているはずなのに存在を証明できない”人物。
それらは互いに無関係のようで、どこかで繋がっている。
見ていないのは、自分だけなのか。
それとも——この世界のほうが、すでに何かを見落としているのか。
“観測されるものだけが存在するのか”。
その問いに触れたとき、理央の立っている場所は、静かに揺らぎはじめる。
これは、日常の中に紛れ込んだ違和感を辿り、存在と認識の境界へと至る物語。
■登場人物
東雲理央(しののめ りお)
高校生。哲学的な思考を好み、日常に潜む違和感や矛盾を論理的に解き明かす。物事を観察する力に優れているが、その視点は次第に現実そのものを揺るがしていく。
三島
理央の周囲に現れる存在。誰もがその名を知っているはずなのに、具体的な記録や痕跡はどこにも存在しない。
「いる」とされながら、「どこにもいない」人物。
倉沢
理央の同級生。現実的で常識的な視点を持ち、理央の思考や行動に対して疑問を投げかける役割を担う。読者にとっての“現実側”の視点を担う存在。
■世界設定
本作の舞台は現代の高校。私たちは、存在をどのように確かめているのだろうか。
触れられることか。
見えることか。
それとも、誰かと共有できることか。
だがもし、複数の人間が同じものを「見た」と言いながら、それを誰一人として証明できないとしたら——その存在は否定されるべきなのか。
あるいは、観測が一致している以上、それはすでに「ある」と言っていいのか。
存在とは、物そのものではなく、認識の重なりなのかもしれない。
そしてその重なりから外れたとき、人は初めて「存在しない側」に落ちるのだろう。
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