Synopsis
凰朝(こうちょう)の後宮・月華宮(げっかきゅう)に上がるはずだった候妃、凌家の芙蓉(ふよう)が、選妃の儀の予行当日に倒れた——それだけならただの不幸だ。
だが、たまたまその場に居合わせ、たまたま帳(とばり)の中に押し込まれ、たまたま「凌家の候妃」として正殿に担ぎ込まれてしまった下働きの薬師・薊(あざみ)にとっては、そうはいかない。
顔を見せてはならないという儀式の掟に守られ、薊はひとまず急場をやり過ごすことに成功する。しかし彼女を見張るのは、後宮の内情に恐ろしく詳しく、やたらと目つきの鋭い管理官・珂月(かげつ)。おまけに、芙蓉が倒れた裏には、ただの過労では片付けられない“何か”の気配が漂っていた。
生き延びる手立ては、唯一得意な毒の知識だけ。毒を見分けるように人の悪意を見分け、薬を調じるように嘘を調合しながら、薊は「候妃」としての日々を綱渡りしていく。
——これは、毒見の娘が人違いのまま後宮を渡り歩く、しぶとくて痛快な生存記。
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