Synopsis
六十歳。仕事を失い、社会から少しずつ居場所を失っていった男。
求人サイトには「未経験可」「シニア歓迎」「年齢不問」と書かれている。
だが、「年齢不問」は、決して「あなたを必要としている」という意味ではなかった。
そんなある日、男はインターネットで霊能者という仕事を知る。
資格はいらない。
年齢制限もない。
自分にも、できるかもしれない。
匿名のアカウントを作り、「あなたの家にいる霊を視ます」と名乗った。
最初は、ただの嘘だった。
相談者の言葉から想像し、もっともらしい答えを返す。
それだけだった。
ところが――。
自分しか知るはずのないことを、相談者が語り始める。
顔のない女。
彼女を恐れる男の霊。
そして、パソコンの画面に現れた見知らぬ言葉。
――迷惑だから、止めろ。
それでも男はやめなかった。
「先生」と呼ばれること。
誰かに必要とされること。
そして、振り込まれてくる金。
それは、長いあいだ社会から与えられなかったものだった。
やがて彼の霊視は口コミで広がり、企業経営者まで相談に訪れるようになる。
嘘だったはずの言葉が、現実を動かし始める。
そして男は、ある事件をきっかけに、引き返せないところまで進んでしまう。
これは、霊能者の話なのか。
それとも――
誰にも見えなくなった人間が、
「見えないもの」を売り始めた物語なのか。
社会から見捨てられた男を待っていたのは、
人間だったのか。
それとも、死者だったのか。
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