Synopsis
私は、フグで死んだ。
百八個の資格を持つ会社員だった。医師免許も、調理師免許も持っていた。ふぐ処理者免許を取ったその日、自分で捌いて食べて、死んだ。
目が覚めたら、資格が力そのものである世界にいた。剣士、魔法士、商人――一万二千種の資格があり、取れば身体が変わり、道が開ける。
だから私は、片端から取ることにした。
当たらない剣を置く剣士。震える手で毒腺を切る魔物調理師。魔力三で井戸の水を沸かす魔法士。誰も受けない「ゲテモノ資格」ばかりを、四十。
最強にはなれなかった。
代わりに、下町の溝が臭わなくなり、パンが百五十Gから八十Gになり、死んだ土に麦が生えた。「もう受けられません」の「もう」が五年だと知らずに四十年待った人が、二千七百四十一人いた。三千年、誰も読まなかった規程の頭には、答えが書いてあった。
資格が取れない娘がいる。三千年で一人だけ、神に「対象外」と記録された娘が。彼女は資格がないまま、椀に四十七人の名前を書き続けている。
これは、番付の下の段で、規程を頭から読み、板に書き続けた男の、九年半の記録である。
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