Synopsis
「よお」
彼はドア枠を片手で掴み、もう片方の拳で天井をゴンゴンと叩いて声をかけた。
十分に気をつけていたつもりだったが、叩いた反動で身体はゆっくりと前方へ流れていく。彼はすぐに指先に力を込め、慣れた動作で体勢を保った。
「……なんだ。お前か」
個室の奥で胡坐をかいて宙に低く漂っていた同僚が気だるげに顔を上げた。ヘルメット越しでもその疲労の色ははっきりと見て取れた。何時間も宇宙服を着たまま作業を続けていたのだから無理もない。ましてや、その苦労のすべてが徒労に終わったとなればなおさらのことだった。
「なんだとはなんだ。最後の時を共にしようってのによ」
「お前とだけはごめんだね」
同僚は鼻で笑った。
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