Synopsis

海と山に挟まれた交易都市、アルデア。 この街には、死者を弔う「墓守薬師」という変わった職業がある。 死者の身体を調べ、病だったのか、事故だったのか、それとも誰かに殺されたのかを見分ける者たちだ。 その中でも、リゼットは変わり者だった。 人の顔より薬草を覚えるほうが得意。 生きている人間より、死んだ人間のほうが話が早い。 そんな彼女のもとへ、ある夜、一人の男の遺体が運び込まれる。 男は大商会の跡取り。 表向きの死因は「食あたり」。 ところが、遺体を見たリゼットは一言。 「この人、食あたりではありません」 胃の中から出てきたのは、毒ではなかった。 ほんの少量の、珍しい薬草。 しかもその薬草は、普通なら薬として使われるものだった。 薬になるものが、なぜ死者の胃に残っているのか。 調べていくうちに、リゼットは奇妙な事実に気づく。 死者は毒殺されたのではない。 ――死ぬはずのない薬を飲まされて、死んでいる。 さらに事件の裏には、商会同士の争い、違法な薬の密売、身分を偽った薬師、そして街を揺るがす古い疫病の記録が隠されていた。 「死人は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって生きている人間だ」 そう言って、リゼットは今日も死者の身体を調べる。 だが彼女自身にも、誰にも話していない秘密があった。 彼女はかつて、この街で起きた「百人毒死事件」の唯一の生存者だった。 そしてその事件を起こした犯人は、まだ生きている。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou09/10/2026
  • Current死者は薬を飲まない――港町の墓守薬師は、死人の証言から事件を解く