Synopsis
花家小町がこの世を去ってから十一年が過ぎた。二十九歳になった伊勢は、六年勤めた出版社を辞め、生まれ育った街へ戻っていた。
その夏、一つの事実を知り、十月に伊勢は生まれて初めて日本を出た。行き先はリスボン。小町が最後を迎えた街だった。
人は、喪った相手を、喪ったときの姿のまま持ち歩く。伊勢もそうだった。十一年、一度も重さの変わらない荷物として。
訣別のための旅のつもりだった。区切りをつけて、帰ってくる。それだけのはずだった。
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