Synopsis

海辺の小さな街には、昔から不思議な噂がある。 ――眠れない夜に鯨の声を聞いても、海を見てはいけない。 十八歳の水城澪は、そんな話をただの昔話だと思っていた。 ある夜、午前二時。 海の向こうから、低く長い鯨の声が響く。 直後、澪のスマートフォンに「非通知」の着信が入った。 電話の向こうにいたのは、同い年の少女――灯。 自分がどこにいるのかも分からない彼女と、鯨が鳴く夜だけ繋がる奇妙な電話。 やがて澪は知る。 この街では昔から、夜鯨が鳴く夜にだけ、もうこの世にはいない人から電話がかかってくることを。 妻を亡くした老人。 喧嘩したまま親友を失った少年。 娘の部屋を片づけられない父親。 ありがとうを言えなかった教師。 それぞれが胸に残した「言えなかった言葉」を、夜鯨は一夜だけ繋いでいく。 そんな人々の別れに触れるうち、澪も少しずつ変わっていく。 そしてある日。 十二年前の海難事故の記事に、澪は見つけてしまう。 ――死亡者名簿に記された、「灯」という名前を。 なぜ、死んだはずの灯と自分は繋がったのか。 なぜ自分は、あの日の事故のことを何も覚えていないのか。 そして夜鯨は、いったい何を運んでいるのか。 これは、 忘れることで前へ進むのではなく、大切な人を覚えたまま生きていくための物語。

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Kakuyomu
Kakuyomu08/17/2026
  • Current君のいない夜を鯨は泳ぐ