Synopsis
猟の客を招いた前庭で、家令はわたくしを立たせて申しました。「犬を勝手に出した」。
否定はいたしません。ただ一つだけ伺いました。——猟に犬を出す権を、あなたはいつからお持ちのおつもりでしたか。
呼び笛は先代が預けたまま、預け替えの書面が一度もございません。前庭が黙りました。
鼻の効きは生まれた腹で違い、足の残りは前の猟の疲れで違います。風が谷から来る朝は鼻の重い犬を先へ、客の多い日は声の高い犬を後へ回す。番えを書いた紙は剥がされ、廊下の柱には頭数と人数が貼り出されました。「番えなど、番号どおりでよい」。左様でございますね。
では、呼び笛と番えの控えをお返しいたします。首輪も、壊しも持ち出しもいたしません。
三月は何も起きません。番号どおりに繋げば頭数は揃います。「ほら、変わらん」と仰いました。変わらないことが、いちばん怖い時間でございます。
秋の猟の朝、風が谷から来た日に、犬が一頭も声を返しませんでした。ただ翌週から招きの返事が減るだけでございます。
自分の仕事場を持ったわたくしの前で「戻ってくれ」と仰った家令へ、あの問いをそのままお返しするお話。
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