Synopsis

永禄三年(1560年)、南蛮貿易で沸く肥前国・平戸。名門・少弐家の滅亡により落人となった十六歳の秋月藤次郎は、失意の父とともに身を潜めていた。残されたのは一丸の打刀と、僅かな茶道具のみ。武芸で名を上げようとする藤次郎に、父は「滅びた家の者が刀を振るえば警戒を招くだけ」と冷ややかに言い放ち、茶を点てるよう命じる。 ​しかし、藤次郎はただの落人ではなかった。腹の底に燃ぎたぎるは、美濃の斎藤道三のごとき飽くなき野心と、類稀なる勘定の才。彼は茶席で客が漏らす噂話から平戸の情勢を完璧に把握し、さらにわずかな手銭を元手に「油売り」を始めて情報網と資金を拡大していく。 ​そんなある日、茶席に現れた父の仇につながる武士。懐に仕込んだ毒で即座に殺すこともできた。だが、男が松浦家の館へ出入りしていると知るや、藤次郎は毒薬の包みを静かに懐へ戻す。 ​「殺すよりも、城内へ潜り込む足がかりとして生かして利用する——」 ​表向きは愛想の良い若き茶人。その裏で毒薬を調合し、油を売り、野望を研ぎ澄ます十六歳の「蝮」。刀の届かぬ座敷の奥へ入り込み、茶杓一本で戦国を呑み込もうとする、若き暗殺茶人の下克上が今始まる。

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Kakuyomu
Kakuyomu08/17/2026
  • Current『茶杓と油壺 〜若き蝮の毒殺茶道記〜』