Synopsis

「あなたは身内も同然だから、後で」——手当の話になるたび、家令はそう申しました。十九年、後でと言われ続けております。 薔薇の株が五年持つかは、接ぐ穂木ではなく台木で決まります。雨の多い年に伸びた台木は根が浅いので五年目に落ちる。石の多い区画は細い台木を選ぶ。日陰側は接ぎ位置を低くする。畝に挿せるのは本数の札だけで、その日の読みは全部この頭の中にございました。 見立ての札は抜かれ、納屋の柱には本数と日取りが貼り出されました。「台木など、太いのを選べばよい」。左様でございますね。わたくしがいなくても、お館は回ります。 では、見立ての控えをお返しいたします。接ぎ刃も麻ひもも壊しも持ち出しもいたしません。 次の春は咲きます。三年前にわたくしが接いだ株でございますから。「ほら、変わらん」と仰いました。変わらないことが、いちばん怖い時間でございます。 夏、同じ本数・同じ場所の株が、根から順に枯れました。誰も怒鳴りません。ただ秋の贈り花の注文が来なくなるだけでございます。 自分の畝を持ったわたくしの前で「戻ってくれ」と仰った家令へ、あの一句をそのままお返しするお話。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou08/16/2026
  • Current用済み扱いなので薔薇の台木の見立てを置きます。夏に枯れます