Synopsis
「お前のようなケチな女がいなくなれば、我が領はもっと栄える!」
婚約者からそう言われ、エレナ・バロウズは伯爵家を去った。
泣きもしない。
縋りもしない。
彼女が持って出たのは、亡き父から受け継いだ南方の廃港と、長年磨き続けた帳簿の知識だけだった。
――ならば、ここから始めればいい。
船もない。
仕事もない。
人もいない。
けれど、港には良質な珪砂があり、背後の赤土にはガラスを変える可能性が眠っていた。
落ちぶれた天才ガラス職人。
港を知り尽くした老測量士。
仕事を求める元船乗りたち。
エレナは彼らとともに、誰も見向きもしなかった土地に火を灯していく。
一方その頃、彼女を追い出した伯爵家では――
「なぜ金がない!?」
帳簿から一人の管理者が消えただけで、すべてが狂い始めていた。
これは、捨てられた令嬢が「価値のない土地」と呼ばれた廃港を、ガラスと酒と商売で富の港へ変えていく物語。
そしていつか、かつて彼女を捨てた男が、もう一度彼女の前に現れる。
そのときエレナが開くのは、恋文ではない。
一冊の帳簿だった。
Serialization Info
Web Novel