Synopsis
午前二時、航空障害灯の赤い光が三度消えた。
夜間観測員の小暮灯里が空を見上げると、星の間に、音のない楕円形の光が浮かんでいた。
翌朝、昨夜それを見た高校生のひとりが、地面に立てなくなった。水は天井へ落ち、砂は空へこぼれ、眠るたび身体が屋根へ引かれていく。通称、天頂落ち。
航空安全調査の主任・佐伯朔は、宇宙人を信じない。けれど、灯里の測定器が示す異常だけは否定できなかった。
「あれをUFOと呼ぶかどうかは、まだ決めない。まず、落ちる方向を戻す」
二人は、目撃者の同意を取り、三本の地錨灯を現場へ打ち込む。だが、天頂落ちが起きるのは、誰かに進路を決められた人ばかりだった。
十二年前、灯里の母も同じ空を見上げて消えた。朔の妹も、赤い灯が三度消えた夜に帰ってこなかった。
UFOは宇宙から来たのか。それとも、人が選ばなかった未来の境界なのか。
空を信じない彼と、空を測る私。二人が救うのは、さらわれた人ではなく、自分で帰る道を選ぶ権利だ。
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