Synopsis
この日の、城下町の空は抜けるように青かった。
秋の澄んだ空気が、城下町市の中心部へ眩い光の束を地上に落としている。
熊本城周辺は景観保護のため高層ビルが少なく、『城下町市庁舎ビル』がひときわ目立って立っていた。
その屋上、剥き出しの胸壁の外側、わずか幅30センチメートルのコンクリートの縁に、一人の男が立っていた。
男の名は、清水良正。
下町の小さな町工場で働く、油にまみれた日々を送る実直な工員だった。彼の履いている安全靴の先は、すでに虚空に突き出ている。一歩踏み外せば、確実な死だけだ
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