Synopsis

王立劇場で十二年間、リヴィアは誰かが倒れたときだけ舞台に立つ「名前のない代役」として働いてきた。 彼女に与えられた役紋は、何も刻まれていない外れの【空白】。どんな役にも一晩だけ合わせられるため便利に使われてきたが、ポスターに名前は載らず、どれほど完璧に演じても、拍手は看板女優のものだった。 記念公演を代役として救った夜、支配人から告げられたのは感謝ではない。 「代役に名前はいらない。お前の代わりもいる」 その言葉を聞いたリヴィアは、十二年間勤めた王立劇場へ静かに辞表を置いた。 劇場の外で彼女を待っていたのは、人前でうまく話せない脚本家ノア。 「今度は、あなたの名前を台本に書かせてください」 彼が率いる旅一座〈青い天幕〉に残されていたのは、穴の開いた天幕、古びた舞台馬車、たった三脚の客席。そして、有効期限まで九十日しかない巡業札だった。 一座を存続させるには、七つの町で客席を満員にしなければならない。 耳の聞こえない影絵師の少女、喜劇の才能に気づいていない元歌姫、英雄と呼ばれることを嫌う片脚の元工兵――。 行く先々で訳ありの仲間を迎えながら、リヴィアたちは、その町の人々が本当に見たい物語を舞台にしていく。 やがて判明するのは、【空白】が誰かの役を借りるだけの外れ役紋ではないということ。 仲間と観客の心が重なったとき、この世界にまだ存在しない「新しい役」を生み出せる、特別な役紋だった。 これは、誰かの代わりにしかなれなかった女性が、自分の名前で拍手を受け、帰る場所と演じたい役を見つけるまでの物語。 なお、彼女を失って初めてその価値に気づいた王立劇場から、どれほど好条件で戻ってほしいと言われても――もう遅い。 彼女の幕は、新しい仲間たちと共に上がったのだから。 ※全50話・第1部完結予定。

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Syosetu wo Yomou
Syosetu wo Yomou08/22/2026
  • Current王立劇場で十二年間、名無しの代役でしたが、外れ役紋【空白】で旅一座を始めます~訳あり役者の舞台は今日も満員です~