Synopsis
大学1年生のみうは、生まれつき美しい天然歯の持ち主だったが、幼い頃から街で見かける矯正女子の「鋼鉄の檻」に口内を支配されることに狂おしい憧れを抱いていた。ネットで見つけた歯科医・桐生のもとを訪れたみうは、二度と取り外しができない永久矯正装置の施術を決意する。
施術では、生来の健康な歯をすべて抜歯した上、顎骨の深部にチタンアンカーが打ち込まれ、超高密度ジルコニアの人工歯と軍用級超合金の大型ブラケット、極太ワイヤーがラチェットで完全ロックされた。さらに、みうが選んだ「裏側スパイク(棘)オプション」により、歯の裏側には無数のチタンの棘がびっしりと配置された。
装置がセットされた瞬間から、みうの生活は一変する。口内のスパイクが舌の動きを物理的に封じ、言葉を作る機能を根底から奪い去った。さらに、巨大なブラケットのせいで口は指一本分しか開かず、固形物を噛むことも、お気に入りのパンや食事を味わうことも不可能になった。歯ブラシの毛先すら金属の隙間に届かず、汚れを取り除くことすら許されない。ベッドに入れば、脱力した舌がスパイクに突かれ、横を向けば超合金が頬の粘膜を食い裂くため、安らかな睡眠すら奪われた。
大学に戻ったみうは、友人・絵里の温かい気遣いに触れるものの、自分の軽率なフェチ心と指先ひとつの選択が招いた「一生言葉を失い、流動食だけで生きる絶望」を打ち明けることはできなかった。大好きだったカフェの接客バイトを辞めざるを得なくなったみうは、発声ができないと嘘をついて倉庫の夜間ピッキング作業員として働き始める。
周囲と一切の会話を交わすことなく、流動食でかろうじて命を繋ぎながら重い荷物を運ぶ毎日。鏡に映る自分の姿は、冷たくギラつく鋼鉄の檻に囚われた、声なき怪物そのものだった。自ら望んだ「不滅の拘束」の重みを一生抱え続けながら、みうは無機質な日常を歩み続ける。
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