Synopsis
「七日後に、笑って振ってくれればいいので」
二年の三雲透には、人の声に混じる息の乱れが聞こえる。ただし、それが嘘なのかどうかまでは分からない。
放課後の昇降口で放送部のエース・鳴海凛に告白されたときも、物陰のスマホと、彼女の指が握りつぶしている紙の音に気づいていた。
罰ゲーム。期限は七日。紙には「恋人がやること」が三十件、書き出されている。
だから透は、頷いてこう言った。
「七日じゃ足りません。九十日にしてください。三十件、全部やるので」
嘘だとは、一度も言わない。
放送室の相談箱に届いた匿名の相談へ、凛が完璧な答えを返す。透はその答えのとおりに、その日ひとつ、約束を果たす。
――話さなくていいよ。歩く速さを合わせれば伝わる。
――誘わなくていい。先に座って、席を一つ空けておけばいい。
凛が自分で答えたやり方で、凛の逃げ場が一つずつ消えていく。
果たした行に線を引くのは、いつも彼女の手だ。
あと八十九日。あと六十日。あと二十九日。
嘘をついたほうが、先に泣きそうな顔をしている。
Serialization Info
Web Novel