Synopsis
人の世界と暦のあいだには、七十二の小庭から成る「綴季庭」がある。
雨の匂い、夕暮れの風、落ち葉の音、霜の朝の静けさ。人々が見つけた小さな季節は「季片」となり、四人の綴り手によって暦へ縫い戻される。そうして春夏秋冬は、今日まで巡ってきた。
ところがある朝、春の門が開かなくなる。
芽吹き係のササメは、誰より早く春のしるしを見つけていた。けれど、間違うことが怖くて声にできない。待ちきれないナギロが門をこじ開けると、花びらと雪が同時に噴き出し、庭の季節はほどけ始める。
四人が乱れた暦の奥で見つけたのは、存在しないはずの「七十三枚目」の記録と、人の世界から届いた言葉だった。
――春なんて、来なければいい。
これは、見過ごされた季節にもう一度名前を与える物語。小さな変化を見つける者、立ち止まれない者、忘れられない者、休めない者が、それぞれの不器用さを抱えながら一年を渡していく。
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