Synopsis
五年間、一度も感謝の言葉をもらえなかった。
花を活ければ非効率だと言われる。
茶菓子を三種選べば一種で十分だと返される。
使用人を休ませれば甘やかすなと叱られる。
リーゼロッテの婚約者にとって、彼女の仕事はすべて無駄らしい。
どれだけ屋敷を支えても、返ってくるのはその一言だ。
五年分の諦めが静かに積もった朝、リーゼロッテは微笑んだ。
お言葉に従い、無駄を省きます、と。
花を替えることをやめた。
声をかけることをやめた。
茶菓子を選ぶことをやめた。
言われた通りにしただけだ。
なのに三日で花は枯れ、使用人は去り、来客が眉をひそめる。
婚約者だけが、その原因に気づけない。
リーゼロッテは怒鳴らない。
泣かない。言い返さない。
ただ静かに従っただけで、すべてが壊れていく。
彼女が最後に微笑んだ理由を、まだ誰も知らない。
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