Synopsis
あらすじ
勇者は魔王を倒した。
魔王軍は滅び、魔王城は焼かれる。
けれど、その地下にあった図書館だけは、勇者の命令によって残された。
「本だけは、人を憎まない。」
そう語った老いた魔王は、すべてを失ったあと、一人の司書として静かに生き始める。
毎日、本を磨き、誰も来ない図書館で扉を開け続ける。
そんなある雨の日、一人の少女が迷い込む。
文字を知らない少女へ、魔王は「あ」から教え始めた。
やがて少女は本を読み、夢を持ち、人へ知識を伝えていく。
農夫は農業書で畑を救われ、兵士は詩集に心を救われ、母親は医学書で子どもの命を守る。
魔王は誰の名前も覚えず、恩を着せることもない。
ただ、その人に必要な一冊を差し出し続けるだけだった。
それから幾十年。
図書館は町の中心となり、人々の人生を静かに変えていく。
そして、魔王が最後の時を迎えた日――。
棺の前で、一人の老女が静かに口にした。
「先生。」
その一言は、いつしか図書館中へ、町中へと広がっていく。
これは、英雄にも悪役にもなれなかった一人の魔王が、本を愛し、人を信じ続けた物語。
きっと読み終えたあと、あなたも誰かに一冊の本を手渡したくなる。
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