Synopsis
四十連勤の果てに会議室で倒れ、そのまま死んだ。二十九歳、システムエンジニア・結城湊の最期である。
目を覚ますと、辺境グレン村の十二歳の少年になっていた。
そして迎えた魔力測定の日。水晶球が示した数値は、村の百年の歴史で最低の「2」。
笑われながら、しかし彼は気づいてしまった。
――測定器の中を流れる光の文字列。あれは、桁を落としているバグだ。
この世界の魔法は、数千年前に書かれた「術式」という名のコードだった。
現代人は意味を知らないまま丸暗記で詠唱し、写し間違いと継ぎ足しを重ね続けてきた。もはや誰も全体を読めない、世界規模のレガシーシステム。
ミナトの固有能力「構文視(コードサイト)」は、その術式を視て、読んで、書き換える力。
攻撃魔法は一発も撃てない。それでも、壊れているものなら直せる。
止まらない水汲みポンプ。飼い猫を泥棒と判定する防犯結界。スープを氷に変える保冷庫。
村の困りごとを一つずつ直していった先で、彼は北の山に眠る古代遺跡へ辿り着く。
そこに遺されていたのは、数百年前の技術者たちが書き残した、一通の警告文だった。
『保守担当者へ。何があろうと、"管理者"を再起動させるな』
殴らない。壊さない。読んで、直して、次に渡す。
最弱の保守エンジニアによる、異世界システム改修記。
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