Synopsis
二十年、郷の寄合の飯を炊いてまいりました嫁が、「火の番など誰がやっても同じ」と火吹き竹を取り上げられ、竹を釜の前に置いて出て、いまは自分の名で膳を立てております。
与助さんは歯がないので粥を別鍋。六兵衛さんと七蔵さんの膳は柱一本ぶん離す。祝いの前日は塩を控える。それを数えていたのは、わたくしの頭の中だけ。釜に残るのは炊いた結果であって、炊いた理由ではございません。
同じ手順で炊いた翌月の寄合は、飯が三升残りました。わたくしは何も止めておりません。ただ、講元の老婆がひとこと仰っただけ。「うちらはあの家の飯を食ってたんじゃない。あんたの膳を食ってたんだ」。
——寄合に呼ばれないお家に、竹は置いてまいりました。
Serialization Info
Web Novel