Synopsis
来春、この駅は無人になる。
八月一日の下り一本目。毎年その日、同じ女がひとりで降りてくる。花も荷物も持たず、改札を出ず、終電を見送って始発で帰る。
三十年間日誌をつけてきた駅員が、今年もその一日を書きとめる。最後の夏だった。
十七年前の同じ日、この駅の先の踏切で、若い男がひとり死んでいる。過去の日誌を並べれば、筋は通る。欠けている箇所は、ひとつもない。
三月三十一日。無人化の前夜に、女がもう一度この駅へ降りる。
——書かれた一行と、書かれなかった一行。
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