Synopsis
~登場人物の紹介とあらすじ~
i)登場人物の紹介
【アズア・レイン】
生活魔道具の設計と修繕を専門とする二十五歳の女性職人。
道具に残る使い手の癖を、色と温度として感じ取る「余熱視」を持つ。婚約者の発明を陰で支え続けてきたが、功績も居場所も奪われたことを機に婚約を解消。「誰かに選ばれる前に、自分の仕事を自分で選ぶ」と決め、墓地の門番小屋で修繕工房を開く。
【ゲオルゲ・ハルデン】
聖樹墓地の管理人を務める土木技師。
アズアへ門番小屋を貸し、工房の整備を手伝う。発明好きだが、試作品にはたいてい余計な機能がついている。アズアへ静かな好意を抱きながらも、彼女の意思と仕事を尊重し、踏み込みすぎない。
【アリ・ノーマン】
時計店の娘で、アズアの最初の弟子。
時間と数字に強く、修繕記録や納期管理を担当する。師匠の成功を心から喜ぶ一方、必要なときには遠慮せず意見を伝える。
【オスカー・ベルン】
墓地前の食堂「丸い匙亭」の料理長。
慎重な検証を得意とし、修繕した調理器具を実際の料理で確かめる。無表情のまま大量の卵焼きを食べる、工房専属の実食検査役。
【レオン・グラーツ】
アズアの元婚約者で、王都の新進魔導技師。
アズアの設計を自分の名で発表し、有力商会の令嬢との結婚を選んだ。技術を世に広めるには権力と資金が必要だと信じ、ヴァルデンへ新型公共魔力網を持ち込む。
ii)あらすじ
魔導技師アズア・レインは、婚約者レオンの発明を陰で支え続けてきた。
ところが王都で開かれた発表会で、彼女が設計した装置はレオン一人の功績として披露される。さらに彼は、有力商会の令嬢との結婚を決めた後も、アズアへ匿名の助手として働き続けるよう求めてきた。
「恋も、発明も、お返しします」
婚約を解消したアズアは、亡き母が残した紹介状を頼りに、秋の長い城壁都市ヴァルデンへ向かう。
紹介された仕事場は、墓地の正門脇にある古びた門番小屋。
そこでアズアは、生活魔道具専門の「秋風工房」を開くことになる。
亡き妻が使っていた卵焼き鍋。
別れの言葉を繰り返す音声箱。
家族の思い出が重なった入れ子人形。
大切な人の時間で止まった古時計。
アズアが直すのは、ただの故障品ではない。
道具に残された思いを持ち主の暮らしへ返し、人々がもう一度前を向くための修繕だった。
少しずつ町の信頼と仲間を得ていくアズア。しかしヴァルデンには、墓地の地下を通る古い公共魔力網と、母が隠した重大な秘密が眠っていた。
そこへ現れたレオンが、町中の生活魔道具を一つにつなぐ新技術を発表する。
便利で明るく、古い技術を必要としないはずの魔力網。
だがその装置は、人々の道具から大切な「使い癖」を奪い、町全体へ危険な残響を蓄積していた。
一人だけの天才になるのではなく、誰もが直せる技術を残す。
恋愛に人生を預けることをやめた女性職人が、弟子や町の人々と力を合わせ、壊れた暮らしと自分の名前を取り戻していく
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