Synopsis
「紙を無駄にする。反故を溜め込む。数を勝手に直す」——寄合の座で、夫と親方はわたくしの咎めを十一まで数え上げ、今日限りで貼り場から手を引けと申しました。
襖は、上に貼る紙で決まるのではございません。骨が逃げる側へ、下貼りを何枚入れておくか。北の座敷は八枚、川筋の家は湿るので四枚、親方が採寸を違えた分はそのぶん足す。柱に貼れるのは糊の割と紙の枚数だけで、どこへ何枚入れたかは全部わたくしの頭の中にございます。
四年、その紙を「無駄」と呼ばれてまいりました。左様でございますね。では今日から、わたくしは一枚も余計に貼りません。
道具は壊しも持ち出しもいたしません。置いてまいります。やめるのは、手を入れることだけ。
梅雨は一度で足りました。南の襖が閉まらない。川筋の座敷が波打つ。二人で押しても敷居の途中から動かない。誰も怒鳴りません。ただ、囃した口が順に閉じてゆきました。
四年前の反故を一枚だけ懐に入れて座を出たわたくしへ、材木の仲買が尋ねます——「あんたの下貼りに、うちは月いくら払えばいい?」。値を尋ねられたのは、四年で初めてでございました。
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