Synopsis
森蔵に残された余り麦が、なぜか黴びていなかった。
祭りの後に余った麦袋は、川沿いの道で湿り、荷車の底で濡れ、若葉の布で口を塞がれ、森蔵の奥で熱を持ちかけていた。
普通なら、白く黴びる。
芽を出す。
虫を呼ぶ。
薬草の匂いを吸う。
粥にしても腹を壊すものになる。
だが、森蔵の台所番ミサには、料理の才能も、保存魔法も、精霊の加護もなかった。
ミサがしたことは、ただの分別だった。
濡れた袋と乾いた袋を分ける。
熱い袋と冷たい袋を分ける。
芽を出しかけた袋を今日の粥に回す。
虫のある袋を離す。
薬草の匂いが移った袋を燃やす。
分からないものを、分からないものとして置く。
森の恵みは豊かだ。
けれど、森は食べ物を湿らせる。
ミサはそれを、台所で何度も失敗して覚えていただけだった。
ところが、余り麦が無事だったことで、周囲は「保存料理だ」「精霊の加護だ」「料理チートだ」と騒ぎ出す。
違う。
料理チートではありません。
余った麦を腐らせなかっただけです。
これは、森蔵の片隅で、黴びるものとまだ残せるものを分け続ける、台所番ミサの話。
本作は『第十六個体観測録』関連作品です。
本編:『第十六個体観測録』
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本作は、作者が世界観設定、キャラクター設定、勢力構造、物語の方向性を作成し、それらに基づく本文案の整理・推敲補助にAIを使用しています。AI出力をそのまま投稿するものではなく、作者が内容確認、設定整合性の確認、加筆修正、投稿判断を行っています。
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