Synopsis
自分の過去に関する記憶を一切持たない、旅の魔女エルノア。
深緑のローブを翻し、手に一冊の『無題の皮革手帳』を携えた彼女は、自分の失われた「本当の名前」と「大切な記憶」の手がかりを求めて、あてのない旅を続けていた。
彼女の頼りは、各地に伝わる「かつて街を救った伝説の魔女」の噂。
「もしかしたら、その魔女様なら私の過去を知っているかもしれない」――そう無垢に目を輝かせながら街々を巡るエルノアだったが、彼女自身もまた気づいていない、悲しくも残酷な《呪い》が存在していた。
それは、「奇跡(大魔法)を行使して街や人を救うたびに、その街で紡いだすべての思い出と記憶が消滅してしまう」という代償。
エルノアがかつて命懸けで救った街の人々は、成長した姿で彼女と再会し、涙を流して感謝を伝える。
しかし、大魔法を放ち直近の記憶を失ったエルノアは、まっさらな瞳で首を傾げ、丁寧にお辞儀をするのだ。
――「初めまして、親切な方」と。
助けられた人々は痛感する。彼女に真相を告げれば、「人を救うこと」への恐怖と罪悪感で彼女の心を壊してしまうと。
だからこそ人々は、溢れ出る涙を必死に堪え、とびきりの笑顔で「初めまして」と挨拶を返し、彼女のサッチェルバッグへ「思い出の品(星の歯車、空色のしおり……)」をそっと贈る。
失われた記憶の代わりに、カバンの中で静かに増えていく「形のある想いたち」。
忘却の旅路の果てに、エルノアが最後に辿り着く「最初の記憶」と、彼女が胸のペンダントに秘めた約束の真実とは――?
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